「アカデミー賞」は癒やし志向
読売新聞 - 2月27日
。。。人間を見つめる視点を少し前向きにすれば、“癒やし”は“希望”になる。インドのスラム街で育った若者を巡る物語を現地で撮影した「スラムドッグ$ミリオネア」は、まさに、経済的苦境に希望の光を差し込む映画。作品賞、監督賞の受賞は当然だろう。「スラムドッグ$ミリオネア」の受賞は大方の予想通りで、他の賞の行方も含めて、「少ない驚き」「大体脚本通り」(ロサンゼルス・タイムズ)と皮肉る見方もある。しかし、インド人の出演者を使いインドで撮った映画が、ハリウッドで正面から評価されたのは、アカデミー賞の歴史にとって、「少ない驚き」ではない。 作品賞の授与では、インド人の子役やスタッフらが壇上に上がって喜びを分かち合い、監督賞を受賞したダニー・ボイル監督は、ムンバイの人たちに向け、「あなたたちの前では、このオスカー像は小さく見える」とスピーチした。こんな晴れの舞台を、数年前、誰が予想しただろうか。。。