ヒンディ語映画界(ボリウッドとも呼ばれる)とシネコンチェーン間のストが話し合いや交渉上続いた3ヶ月間はほとんど新しい映画が公開されなく、映画ファンにとっては大型スクリーンで大型映画が観たいという面ではとても長期間だったかもしれません。それに、とても期待されていた本作の「ニューヨーク」。本作と以下ポストの「Kambakkt Ishq」がスト終了後すぐに公開が決まった2作ですが、こちらの方が映画としてはまるまる娯楽映画のKambakkt Ishqとは全く違うタイプのとても真面目でリアルなストーリーを舞台にした映画です。2006年の前作「Kabul Express」で知られるKabir Khan監督によるまたダイナミックでびびっとくる話と監督らしいリアルに感じるストーリー、アクションシーンではスケールの大きさ、実力を見せる俳優たちがいれば、いうことなしですが、監督の本作は期待に応じてくれたと多くの国内視聴者の反応です。また、アメリカのメイン・メディアにも評価されつつあります。
完全にニューヨーク現地ロケです。ストーリーとしてはニューヨークに生まれ育った男性主人公とインドから大学生としてやってきたもう一人の男性主人公、そして共通の女性友達の女性主人公を中心に、3人が会ってから7年後の2001の例の実際に起きた大事件の9・11を背景に、余計に巻き込まれるそのうち一人の男性。本人はアメリカ生まれでも、宗教が理由に逮捕され、酷い目に合い、しかも、離れて暮らしている昔の大学時代の同校生が数年も全く会っていないことでもFBIに捜査上逮捕され、昔の友人の家に暮らしてほしいという彼にとってのショッキングな出来事が生まれる瞬間から視聴者もどんぐり返しの展開上のスリラー映画でもあります。公開以降、そして現在もインド国内ではこのセンスのいいサントラが売れていますが、いわゆるダンスシーンなどはありません。というか、その余裕も必要もない真面目な映画です。ただし、真面目でありながら娯楽性が十分にあり、飽きることなく、アットいう間に終わってしまった、という感じです。
監督のKabeer Khanは元々ドキュメンタリー監督であることから前作も本作もその実力派と技術面を重視する以外にキャラクター作りへの配慮も実感できます。二人の男優主人公は今までは通常に娯楽映画で普通にいい演技と言えたものが、今後より期待されるはずですが、とにかく演技が上達したと言えるのが女優のKatrinaでしょう。今まで「可愛い」とばかり呼ばれてきたのが本作ではとても関心する実力派女優に成長したという印象を受けることから、今後より難しいキャラのオファーも入っていくことだと言えるでしょう。また、南アジア出身のニューヨークFBI本部にいる捜査官を演じるあの「スラムドッグ」のIrfaan Khanはいつもどおりの実力派で、大きくストーリーと各展開を支えてくれる重要な役割を果たしています。とてもリアルな演技を見せてくれるメインの3人の主人公は本作以降は別目で期待されることになると無難に言えるでしょう。
海外には知られていないようですが、この6-7年間はシネコンのおかげもあり、いわゆるタイプの映画が登場するようになっています。単なる娯楽入りの映画のみは売れなくなっているので、何かUSP(特徴)がなければ、かなり厳しい状況になってきているのも事実です。本作はいつも娯楽映画を中心に制作してきた映画スタジオのYR Filmsがその大きな証拠です。それで言えば、今年これから公開予定とされている映画ではリアルなストーリーやいわゆる社会現象を舞台にした作品が色々と並んでいます。今後ともいい作品を楽しみにしておきたいものです。